万国津梁の志

東京ディズニーランドが開業した1983年は日本の観光産業の「装置産業」元年と言えます。沖縄では万座ビーチホテルが開業しました。以降西海岸には次々と大型リゾートホテルがオープンし、各地から那覇空港へ定員500名超のB747・ジャンボジェットが飛び,20世紀末には沖縄観光の成長期を迎えていました。       そして21世紀最初の年に「9.11米国同時多発テロ」が起こりました。ハワイ州を含む米国への旅行需要は壊滅。基地があり非常事態体制下の沖縄にもその影響が及び旅行者は大幅に減少しました。沖縄観光にとって戦後最大の危機だったと言えます。

沖縄県は「だいじょうぶさ~沖縄」キャンペーンを行い、航空会社・旅行会社総出の需要喚起が行なわれました。需要喚起策の多くはGotoトラベルキャンペーン同様に旅行代金の大幅な値下げ・割引。いつの時代も同じなのでしょう。

米国同時多発テロの前年に開催された沖縄サミットのテーマは皮肉にも「一層の繁栄」・「心の安寧」・「世界の安定」。米国同時多発テロにより理想は砕かれ混乱の21世紀が始まりました。                          一方では首里城をはじめとする「グスク及び関連遺産群」が世界遺産に登録され、「繁栄」・「安寧」・「安定」を実現していた琉球王朝から引き継がれた「互譲」と「万国津梁」の精神が注目されるようにもなりました。その精神、志は”ちゅら”という沖縄方言で形容された「美ら海」「美ら島」等の多くの言葉とともに沖縄独特の空気感(風度)となり、今も旅行者を魅了し続けています。

朝鮮半島・中国大陸・東南アジアそして日本などと交流していた琉球王朝時代、沖縄の島々は”端っこ”などではなく”万国の中心”であり、交流のゲートウェイでもあったのではないでしょうか。

 

米国同時多発テロの翌年3月某日。米国同時多発テロに起因する旅行需要壊滅からV字回復を果たした沖縄で全日空歴史シンポジウム「美ら海と島唄の物語~琉球王朝・心の世界遺産を訪ねて~」が開催されました。記念ライブでは全国からの参加者と稲嶺沖縄県知事(当時)を始めとする地元参加者が一緒になって平和を願いカチャーシーを踊りました。

 

 

 

 

2021年3月7日