屈伸する覚悟

前回の投稿から1カ月近く経ってしまいました。季節は真夏となり、それも外出・飲食が不自由な夏。23日からは東京オリンピックが始まりました。選手たちの活躍は素晴らしいのですが,対比するようにコロナ感染者が急増し、「ロックダウン」まで現実味が帯びる状況となっています。個人的には2度のワクチン接種は終わりましたが感染が身近に近づいている恐怖は増しているように思えます。交流、特に海外との交流再開はまだまだ先のようです。

先日NHKBSプレミアム「プロジェクトX」の再放送で戦後初の国産民間旅客機YS11の開発が取り上げられていました。第2次世界大戦中の1944年11月、シカゴに52か国が集まり戦後の国際民間航空の枠組みが協議されました。その時米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が日本(ドイツもイタリアも)の航空の「完全禁止」を宣言しました。「ゴム紐で飛ばせる模型飛行機より大きい物体を飛ばすことは一切禁じる。」と言ったとされます。そして終戦。日本は保有していたすべての飛行機を連合国に没収され、(その後すべて破壊・焼却)1952年4月のサンフランシスコ講和条約までの約7年間、日本の航空禁止時代が続きました。私は航空機に関して詳しくはありませんが、日本で未だに国産ジェット旅客機ができないのは戦後7年の空白が遠因ではないかと思ってしまいます。「プロジェクトX」ではYS11開発に携わった戦時中の航空機設計者(ゼロ戦の堀越次郎氏、飛燕の土井武夫氏)と若手設計者のチームが紹介されていましたが、本格的なYS11開発のリーダー役を務めたのが東条英機の次男、東條輝雄氏であることを初めて知りました。またこの番組に共通する当時の官民一体となった「日本を一流の国にするんだ」という熱量を感じ、不覚にも目頭が熱くなりました。真に”ものづくり大国”を目指していた先人たちの「覚悟」に感動します。私の尊敬する文化勲章受章者の中西進先生は「日本人には屈伸力がある」とおっしゃいました。何もかもなくなった焼け野原からの「屈伸」はとてつもない「覚悟」だったと思います。その「覚悟」はこのコロナ禍から復活するDNAとして日本の”ものづくりの会社”には受け継がれていることにも感動します。

さて観光大国を目指している日本。観光産業はすそ野が広いと言われています。しかし、すそ野が存在するためにはその中心に核となる産業、運輸業・宿泊業・旅行業などの観光関連産業が断固としてそびえ立っていることが必要だと思います。山の高さとすそ野の広さは比例するからです。コロナ禍から復活する「屈伸力」を観光関連産業は持っているのか?「屈伸」する「覚悟」はあるのか?

すそ野が広いとは「みんなで渡れば怖くない」ではありません。今こそ観光関連産業、特に旅行業にその「覚悟」が問われているのではないでしょうか?

 

 

2021年8月7日