スケルトン

航空機を使った国内旅行が爆発的に成長した一つの理由はボーイング747(ジャンボジェット )に代表される乗客数500名前後の大型機の就航でした。私が担当者として旅行業務に携わっていた時代(1980年代)は、団体から個人旅行へのシフトが急速に進んでいましたが、Deregulation(規制緩和)前夜でもありました。機材は大型化していましたが、旅行運賃は認可制,マイレージなどのサービスも不自由な時代で、他社との差別化あるいは閑散期の対策等は旅行商品への依存度が高く、旅行会社の社員そして航空会社の営業マンが元気だった最後の時代だったかもしれません。

同じ沖縄のツアー、特に那覇市内ホテルに滞在するツアーなどは基本フリータイムなのでどこの旅行会社でも同じ内容で”一物一価”となり,旅行代金は下がるところまで下がります。となれば体力があり、販売力(当時は店舗数)のある大手旅行会社が有利。中小旅行会社、零細旅行会社は大手と対抗するためにも私たちが企画した全日空利用の旅行商品を競って売ってくれました。飛行機+ホテルだけのシンプルな旅行商品ではなく付加価値を付けて馬鹿らしい価格競争だけは避ける、その工夫の日々だったように思います。日本航空と東亜国内航空との「企画力」の競争は懐かしい思い出です。

飛行機+ホテルだけのシンプルな旅行商品を当時「スケルトン」商品と呼びました。インターネットを販売手段としたOTA(Online Travel Agent)はこの「スケルトン」商品を主力として一気にシェアを拡大しました。店頭中心で大量販売で稼いでいた既存大手旅行会社は焦りました。一方で時代はDeregulation(規制緩和)へ。運賃・マイレージなど多様なサービスを自由に展開できる時代となり正確無比なオペレーションを好む航空会社もOTAに惚れこみました。24時間いつでも予約可能、需要に応じてダイナミックに旅行代金を変動させることで”一物一価”に陥らなかったOTA旅行商品は国内旅行の主力となりました。所謂”ファストツアー”全盛、旅行会社の「企画力」は金がかかる代物となり、旅行先での着地型に取って代わられるようになりました。

コロナ禍の後、旅行には体験、交流に加えて「安全」という価値が求められます。スケルトンなファストツアーはどこまで「安全」を提供できるか?旅行会社には改めて「企画力」が求められていると思うのですが・・・。

 

 

 

 

2021年6月20日