ふるさとの先人を通して「まちづくり、人づくり、心そだて」を実現しようとする市町連携があります。2007年に15の市町が参加して設立された嚶鳴協議会です。(事務局:PHP研究所)。ふるさとの先人を「偉い人だった」と顕彰するだけではなく、「地域経営の身近な素材」「地域からの情報発信の素材」としてその教えを伝えていく取組を現役の首長さんたちが語り合う場です。声がけは愛知県東海市の鈴木淳雄市長。嚶鳴とは鳥が仲良く鳴き交わす様子を表す言葉です。 嚶鳴協議会で検索できます。
東海市(尾張平島村)は江戸中期に儒教学者・教育家、細井平洲を生みました。市では平洲保育園、平洲小学校、平洲中学校など校名に名前をつけたり、道徳の時間には「道徳 平洲先生」という副読本を使い平洲の教えを市民、特に子供たちに伝え、理解してもらう取組みをしています。「学、思、行相まって良とする」、つまり得た知識を考え、人の役に立つ行いをすることが大事という教えにちなんで、良い行いをした小中学生を表彰する(学思行賞)ことも続けています。平洲は上杉鷹山の師匠でもあり、その教えは上杉鷹山の信条である「敬天愛人」に基づく後の米沢藩藩政改革につながります。毎年首長さんたちが集まりフォーラムをしたり定期的に勉強会を続けていますが、会のメンバーである釜石市が東日本大震災の大津波で大きな被害を受けた時には、応援の職員を派遣したり協議会市町で相互支援を行い学思行の実践もしています。
嚶鳴協議会のアドバイザー的な役目を務めているのが歴史作家・童門冬二氏です。毎年のフォーラムでは講話があり、私も拝聴しています。ある講話で地域には独特の景観・自然、史跡、美味しい食べ物など目に見え、手に取れ、味わえる「風土」とは別に目には見えず、手に取れず、味わえない空気のような「風度」があり地域を特徴付けている、とのお話がありました。観光での地域活性化の本質にもつながる指摘です。「風土」と「風度」が一緒になって訪れる人々を魅了するのです。 「風土」は重要な観光資源なので地方自治体の皆さんはそれを守り、磨き上げようとします。「風度」も同じく観光資源になりますが、それを守り磨き上げるのは教育です。
沖縄を例にとれば青い海・青い空・白い砂浜、琉球料理、首里城などの史跡など素晴らしい風土です。でも那覇空港に到着した時から心も体も包み込まれる空気、雰囲気は何でしょうか?沖縄の言葉、音階、笑顔、街角の作り方などが醸し出すものが訪れる人を魅了し、虜にします。先人たちから脈々と繋がるその土地ならでは魅力である「風度」を伝えていく取組、「まちづくり、人づくり、心そだて」が地域活性化に大切であり、独自の”おもてなし”の心を形成します。首里城は残念ながら焼失しました。建物は再建中ですが、同時に残さなければならないのは琉球文化、そして万国津梁を大切にする人であり、心なのですね。
さて国境・境界地域の先人とは?風度とは?次回はそれについて書いてみたいと思います。